「国破れて山河あり」や「盛者必衰」を地で行く文明と戦争のゲーム!
こんばんは、大佐です。今回はクニツィアの『チグリス&ユーフラテス』の簡易レビューです。このゲームは本当に複雑で例外処理が多いので、そこを分かりやすくまとめるだけでも価値があると思いました。
なので、これを読むことで『チグリス&ユーフラテス』の魅力と、間違いやすい例外的なルール上の処理を理解できるかと思います。本作をプレイする時に困った時や、説明する前におさらいしておきたいときにご活用ください。
目次
ゲームの概要
チグリス川とユーフラテス川の流域をテーマにした文明と戦争のゲームです。プレイヤーは4人のリーダーを操り、優れた国を建国・または優れた国の支配者になることを目指します。厳密には勝利点をより多く稼ぐことを目指しますが、優れた国の指導者となることが勝利点を稼ぎやすくします。
タイルと指導者は4色ずつあり、それぞれが対応しています。この4色のタイルが勝利点を生みます。勝利点は色ごとに発生します。なので勝利点は4色ごとにそれぞれ別カウントです。例えば青が1点、赤が7点みたいに、それぞれの色でバラバラにカウントにします。
なぜそんなことをするのかというと、最後に勝敗の判定には4色の勝利点の最も低いものを比較するからです。勝ちを目指すためには、プレイヤーは4色の得点を均等に獲得することを目指します。
基本情報

タイトル | チグリス&ユーフラテス |
デザイナー | ライナー・クニツィア |
発売年 | 1997年 |
プレイ人数 | 2~4人(ベスト4人) |
プレイ時間 | 90分 |
流通状態 | 流通中(4,400円) |
言語依存 | なし |
BGGレーティング | 7.7点/10点(評価数37000) |
本作の魅力は圧倒的な自由度と、ダイナミックな戦争!
本作の魅力を一言で申し上げるなら「圧倒的な自由度と、ダイナミックな戦争」の一言につきます。このゲームの得点方法は多岐に渡ります。また国家の奪取や潰し方はたくさんあります。その時自分にとってベストだなと思うプレイングを選択できるようになることが、勝率アップにつながるゲームだと思います。
とにかく戦争を通じて、盤面状況がダイナミックに変化します。戦争を仕掛けた本人も予想外に負けることなどにより、予想できない変化をすることも多いです。なので、このゲームでは決まった勝ち方みたいなものはなく、柔軟なプレイング選択能力を問われるように思います。
攻略記事も書いています
自分は過去4回のプレイで全て2位です。1位はまぐれで殴られなかった人が取ることも少なくありません。2位を安定して取るのは実力がないと難しいです。
僕は過去にクニツィアマスターのけがわさんとBorad game geekにあったターンベースの『チグリス&ユーフラテス』で遊び続け、20回以上にわたり彼からあらゆる技を学び続けました。
自分は過去4回の4人プレイで全て2位でした。安定して2位の秘訣があるとすれば、あらゆる国の崩し方を使いこなしているからだと考えています。特に同卓した人は積極的に戦争を仕掛ける「戦争スキー」という認識があるかと思います。そんな、僕がしたためた攻略記事もあります。そちらも是非合わせてご覧ください。
戦争のダイナミックさ!
次に戦争の話です。このゲームの戦争はとにかく楽しいです。破れた国が消し飛ぶので、ゲームの盤面にダイナミックな変化を起こします。自信満々に仕掛けた側が予想外に敗北することもあります。なので戦争の盤面変化は予想が難しいです。
なので戦争が起こると当事者もそうなのですが、第三者であってもどっちが勝つのか楽しく眺められます。ハラハラドキドキの一大イベントです。盛り上がらないわけがないです。

ダイナミックに国家情勢が動く、予想の難しい要素の戦争がこのゲームの肝です。長期的な計画はあまり意味がなく、短・中期的な計画と計画の修正が大切なゲームだと僕は考えています。このゲームは勝つための道筋はロジック(論理)よりも、アート(感覚)に近いと思っています。
ルール上の間違いやすいところ・疑問に思いやすいところ
まず箇条書きします。めちゃくちゃあります。本作は熟練者でも数日前にプレイしたのでなければ、完璧にルールを覚えているということはなかなかないです。本パートではそういう個所をまとめておきました。
- 財宝の獲得は四隅のものを優先させなければならない
- 神官の戦争終了後に破壊されるタイルとされないタイル
- 災害タイルで財宝付きの神殿とモニュメントは取り除けない
- 赤のタイルでモニュメント建造時の、財宝の処理
- 災害で神殿を取り除いた時に、神殿に隣接しなくなったリーダーは手元に戻す
- モニュメントの建造で、神殿に隣接しなくなったリーダーは手元に戻す
- 国の分断はリーダーの移動でも起こり得る
- リーダーを使って国と国を繋いではいけない
- 3つの国を繋ぐタイルは配置できない
- 戦争のトリガーになった、国を接続したタイルは誰の得点にもならない
- 戦争のトリガーを引いた人が当事者でない場合、時計回りで近い人が戦争の攻撃側
- 同じリーダー同士の内部紛争を1ターンに2度仕掛けて良い
12個もあります。めちゃくちゃ多いです。ゲーム中に疑問に思うことがあれば、調べられるようまとめておきました。
財宝の獲得は四隅のものを優先させなければならない
忘れやすいルールの1つです。財宝の獲得が発生した時に、四隅のものがあればそれを優先して獲得するというルールがあります。これは理由はわかりません。そういうルールがあるということだけなので、プレイヤー目線では非直感的ですね。
こういうルールを入れる時は導入の理由を知りたいものです。そうすれば、説明時にも理解が深まりやすいですしね。

神官の戦争終了後に破壊されるタイルとされないタイル
外部紛争で神官(赤のリーダー)同士が争ったときに、負けた側の全ての赤のタイルを取り除くと、やられた側は全てのリーダーが神殿との隣接を失い。住処を追われます。そうなると、全てのリーダーを手元に戻さなければなりません。これでは理不尽すぎますよね?
これを防ぐためのルールとして、神官が外部紛争で負けた時に取り除くタイルは、他の3色のリーダーに隣接しているものは取り除きません。
この時に疑問になりやすいことの1つとして「負けた神官にのみ隣接する神殿」の扱いがあります。これは取り除きます。たぶん処理の順番が「負けたリーダーを取り除く」を行い、次に「支援者(同じ色のタイル)を取り除く」だからと推測します。
他にも財宝つきの神殿は取り除かないこともお忘れなくです。神官の戦争は思いのほかややこしいです。
赤のリーダーの戦争で負けた側が取り除かれないタイル
- 負けた側の神官以外に隣接する神殿(負けた神官にのみ隣接は取り除きます)
- 財宝を持つ神殿
毎回、赤のリーダーの戦争はプレイ前に調べて遊びます。結構覚えにくいんですよね。
災害タイルで財宝付きの神殿とモニュメントは取り除けない
これは初歩的なことですが、疑問に思う範囲かなと思って入れました。災害タイルで財宝付きの神殿のみとモニュメントは取り除けません。
赤のタイルでモニュメント建造時の、財宝の処理
赤のタイル4枚でモニュメントを建造する時に、財宝付きの神殿を使うことがあります。その時はモニュメントのタイルの上に財宝を残したまま、モニュメントを建造します。この財宝は通常の財宝の獲得で問題なく獲得できます。

災害やモニュメントの建造で神殿に隣接しなくなったリーダーは手元に戻す
赤のタイルでモニュメントを建造したり、災害タイルで赤のタイルを取り除いた時に神殿に隣接しないリーダーが出ることがあります。そうなったリーダーはただちに手元に戻してください。住む家を破壊、もしくはモニュメントの一部にされて失ってしまうイメージで良いでしょう(笑)。
住む家をモニュメントの一部にされるって、どんなシチュエーションなんだ……という野暮なツッコミはナシの方向でお願いします(笑)。
災害で取り除かれる場合は特に説明不要だと思いますので、モニュメントの場合だけ、図で説明を入れておきますね。


国の分断はリーダーの移動でも起こり得る
リーダーを移動することで国同士が分裂することがあります。リーダーでのみ繋がっている国で起こりえます。そういう国ではうまくリーダーを移動すれば、国を分断して、その半分を乗っ取ることができます。


このままだと再接続されるので、赤か緑のリーダーを置きたいですね。そうすると接続時に外部紛争が起こるので、かなりやり辛くなるはずです。
リーダーを使って国と国を繋いではいけない
これは初回についやってしまいがちです。リーダーで国を繋いでしまうと、外部紛争が発生する上にそのリーダーがどちらの国に属するか曖昧になるから、禁止されているのでしょう。できないのでご注意ください。

3つの国を繋ぐタイルは配置できない
これは結構レアケースですね。3つの国をタイルで繋ぐパターンです。ルールで禁じられています。おそらく紛争の解決の順番の処理に困るからでしょう。

戦争のトリガーになった、国を接続したタイルは誰の得点にもならない
これも結構忘れます。外部紛争のトリガーになったタイルは誰の得点にもなりません。紛争解決後、適正なリーダーの所有者の得点になると思いがちですが、実は違います。基本的かつ結構ややこしい処理です。
これも毎回マニュアルみて確認します。忘れやすいやつ代表です。
戦争のトリガーを引いた人が当事者でない場合、時計回りで近い人が戦争の攻撃側
これは頻繁に起こるのでゲームを最近プレイした人ならば覚えている基本的ルールです。ですが、久々に本作を遊ぶという人は意外と忘れていることが多いです。
ちなみに当事者でない人が戦争を仕掛けるパターンは結構あります。具体的なケースでいうと、戦争は起こしたが他人同士の戦いから処理したほうが有利な場合とかです。攻撃力が同数の時のタイブレークの都合上、攻撃側は不利なので、どちらが攻撃側かはかなり重要な処理なので忘れないようにしたいです。
これも毎回マニュアルみて確認してから説明しています。ゲーム中そこそこ発生するものなので、覚えておいて絶対損はありません。
同じリーダー同士の内部紛争を1ターンに2度仕掛けて良い
問題なく行えます。内部紛争はリーダーに隣接する神殿の数で基礎値が決まるので、基礎値で勝っている地形を利用して2度同じ内部紛争を仕掛けることはあり得ます。けがわさんによくやられました。
同じ内紛を2回は手損感がありますが、どうして欲しい国がある場合はアリかもです。
評価と感想
まずは公平に良いところと悪いところに触れていきます。
- 圧倒的な自由度。プレイングの引き出しが多い人が有利なゲーム性。
- 巨匠クニツィアですら、奇跡の出来と言われるゲームの完成度の高さと奥深さ。
- 激しい国家間の戦争の後に残るモニュメントは、雰囲気抜群です。歴史を体感できるゲームともいえます。
- 序盤は財宝争奪戦で、中盤は国家間の戦争。終盤は覇権国家の誕生と、その支配権の争いとゲームにストーリー性すら感じる変化があること。
- やっぱり一番は戦争。戦争のダイナミックさは本作最大の売り!負ける側は辛いですが(笑)。
- 初回は特に何をして良いのかわかり難い。選択肢が多く、選択のパラドックス(※1)に陥りやすい。
- 例外処理が多く、ルールを完全に把握するのは熟練者でも難しい。
- 勝利に至るまでの道のりがロジックではなく、アート(論理化が難しい)なこと。
- メリットがあれば戦争をするので、下位プレイヤーが踏まれやすいこと
- 青のタイルの使い勝手が良くないところ。仕様かと言われるとギリギリ仕様のライン。
※1:選択肢が多すぎると逆に決断できなくなったり、選択肢の多さが幸福度の上昇に寄与しない状態のこと
ベストな人数
BGGではベスト4人、3人も良いとのことです。2人は6割以上の人がOKとしていますが、ゲーム性はこう変化します。2人は経験者同士ならばアリだと思います。実力差のある2人は2人プレイは推奨しません。
人数 | ゲーム性の変化 |
2人 | 引きはあるが、ほぼ実力勝負の殴り合い。まぐれで勝つことは難しい。ボードがだだっ広い。 |
3人 | 2人と4人の中間。手番数と運要素のバランスは一番良いと思います。 |
4人 | ベスト。利害が複雑に入り組み合う。他人が争い漁夫の利を得ることも。運で勝つことも難しくない。 |
初回は3~4人でプレイすることを強くお勧めします。自分の国が更地になっても泣かないようなメンタル強めの人向けゲームだと思います。
個人的な感想
クニツィアの究極のゲームに挙げる人も少なくない作品です。その圧倒的な自由度、ゲームのスケールの壮大さ、ストーリー性すら感じるゲーム中のゲーム性の変化。完璧と言えます。
しかし、ゲームで何してよいのかわかり難さは個人的に『バベルの塔』と並ぶ2大クニツィア難関ゲームの1つです。『バベルの塔』みたいに基本のゲームプレイからして、何してよいのかわかり難いということはないです。勝つまでの過程の論理化が難しく、その時のベストなアクションの積み重ねが大事なイメージです。
勝つための方法を無理やり言語化するならば「適者生存」です。戦争などを通じてダイナミックに盤面が変化していく中、その変化に素早く適応していった人が勝つといった感じです。なので長期的計画よりも、直観力で優れる人が有利なゲームという印象があります。
このゲームを理解するためには5プレイは必須かと個人的には思います。なので一度で全てを味わうのは不可能だと思ってください。さらに、プレイするメンバー次第で異なる顔をこのゲームは見せてくれます。このゲームで味わえるのは参加者が国家の指導者なるという実験を行って、できあがる1つの歴史です。
そう思ってプレイすればプレイするごとに新鮮な体験があると言えます。まさに凄いゲームです。たぶん一生遊べるゲームの1つかなと個人的には思います。いろんなプレイヤーの方とプレイしたいゲームです。
推定プレイ回数 | 10回(+デジタルで20プレイ以上) |
僕のPlay:game点数評価 | 9点/10点(素晴らしいゲーム。常にプレイ) |
今後の予測変動幅 | 7~10点(オールタイムベストの1つ) |
『チグリス&ユーフラテス』を買う!
まだまだ流通中です。単品買いならAmazon、中古でも良ければ駿河屋ですね。エディションはいろいろありますが現行版が一番おススメです。全ての拡張セットが付属していて、かつ一番入手難度が低いです。
拡張セットは両面ボード、文明の建物、ジッグラドなどがあり、古いエディションには付属しないので、古いものの中古を求められる方は注意が必要です。